南イタリアの街は劇場だ

南イタリアの街は、まるで劇場のようだ。観光するよりも、街角の人々を見ているほうがずっと楽しい。

スカッパナポリは、まさにオープンエアシアター!「この、くそガキが!」と怒鳴るおじいに、駆けだして舌を出す子どもたち。中学生くらいの子が二人乗りでバイクを乗り回してたり、おばさんたちが大声でけんかするようにしゃべってたり。声だけでなく身振り手振りがいちいち大げさで見ているだけで笑えてくる。

2年ぶりに訪れた私を大歓迎してくれたワインショップのおじさん。愛嬌をふりまきながら巨大なパニーニをつくり続けるおやじ。市場では方言バリバリのにぎやかな呼び声が心地よく、ドゥオモの前では親子のアコーディオン弾きが息のあったハーモニーを奏でる。「ニューシネマパラダイス」の世界を思い出させる島の暮らし。そして、相変わらずテラスや道端でくつろぐ人々多し。「南イタリアには監視カメラなんて必要ないね」と子供は言うが、街がオープンエアシアターなんだから、そりゃテラスは特等席だろう。毎日がライブなんだから。

ナポリ行きのフライトがいきなりキャンセルになった上、朝4時起きでようやくナポリに着いてみたら予想通りスーツケースが現れず、なぜかフランクフルトに飛んでいた。イタリアはそこまで私を嫌っているのかと私がブチ切れ、子どもに諭される。

バゲージクレームカウンターでは「You are lucky!次のフライトで荷物が届くぞ」って、荷物が届かなかった時点で既にアンラッキーなのだが、移動日にちゃんと届いただけ感謝すべきか

イタリアではきっと、物事が上手くいかないのがデフォルトなんだろう。電車もバスも時間通りに来ない、予定があるときは必ず1~2本早い便を取る。レストランにメニューはあってもなんだかんだでぼられることもあれば、ワインをはじめ、いろんなものの価格も店によって大きく違う。窓口が開いているか開いてないか、郵便が届くか届かないか、すべてのことが運次第。それでぼやくことはあっても怒ることはない。とにかく「目に見える情報を信じるな」という考えが徹底しているのだ。

なにもかもがコントロールされた日本から来ると、イラッとすることも多いが、東日本大震災が起きた時、イタリアの多くの友達から「政府の言うことは信じるな。すぐ逃げろ」ってアドバイスされたことを思い出す。困難な状況にあるほど、人はたくましくなる。

そしてまた、そんなイタリアで育った子供がまた心強く頼もしく、どんなに遠くてもビーサンですいすい歩いていくわ、遥か沖まですいすいと泳いでいくわ、荷物はさりげなくもってくれるわ、英語もイタリア語も私よりずっと堪能だわで、ふたりでどこまででも歩いて行けそうだった。一緒に旅してくれるのもあと数年だろうな~と思うと一秒一秒が愛おしい。

最後は子どもをトリエステの父親のもとに送り届け、そのまま私はひとりで帰国。フランクフルトからの帰国便は「台風の進路次第で札幌に向かいます」とのことで最後までドキドキの旅だったが、羽田に無事到着してほっとした(駅からは傘をさしてもずぶ濡れになったけど)ナポリ~パレルモ~ファビニャーニャ島~シラクーサ~タオルミーナの旅日記はいずれまた。

0コメント

  • 1000 / 1000